森友問題は終わっていない

問われる公務労働と職員の矜持

喜多徹信

きた・てつのぶ | 

1948年生まれ。元全財務労組書記長、全国財務局職員(OB)有志による「森友疑惑・公文書改ざん糾弾!国民本位の財務局職場の再建を! アピール」連絡代表。


異例の「貸付け」がまちがいの大もと

 

私は、1967年に近畿財務局に入り、60歳の定年後4年間の再任用期間を経て2013年、退職しました。46年間、近畿財務局で国有財産の売却や貸付の仕事に携わってきました。再任用期間中は国有財産鑑定官という職名で国有地の価格評価、つまり値段付けの担当をしておりました。

財務局の仕事はほかにも、たとえば昨秋、大阪や京都その他で台風や地震があってまだブルーシートに覆われたままというところが少なくありませんが、そういう災害からの復旧・復興のための予算措置をとるうえでの災害査定をやったり、貸金業者の監督や被害相談などもやっています。森友学園へのとんでもない額での売却や決裁文書の改ざんで、「近畿財務局はなんちゅう役所や」とお叱りを受けていますが、多くの職員はそれやこれや、一生懸命働いております。

森友学園が土地取得の希望を出してきましたのは2013年6~8月の公募を受けてですから、私の退職後のことになります。ただ、あの土地を大阪音楽大学が7億円で買いたいと要望を出してきたとき、そんな安い値段では売れないと断った話は記憶しています。近畿財務局の価格評価の担当部署で働いているのは10人ほどですから、直接担当しなくてもいろいろ相談しあったり、意見交換しますのでこの件についても覚えています。

国有地の売却は、国民共有の大切な財産ですから当然1円でも高く買っていただくということが原則ですが、といってむやみに高く売るわけではありません。不動産鑑定士にお願いをして価格を見積もってもらい、買いたいと言ってくる方とすりあわせをします。

問題になった土地の隣はいま豊中市の野田中央公園になっていますが、14億2300万円で買っていただきました。豊中市さんは全部買い上げたい意向だったんですが予算との関係でできずに半分強の取得になりました。財務局の予定価格では10億円ぐらいの線だったんですが、かなりオーバーして売却でき、いわば優良事績になっています。この土地もゴミはあったと思いますが、とくに撤去費を引いたりはしていません。

今回はこれの隣の土地で、それよりやや狭いところですから、野田中央公園を評価の先例に、不動産鑑定士に依頼して鑑定価格を出してもらい、財務局で審査をして9億6千万円の値段を付けたわけです。

国有地は、「国有財産法」に基づき規則や通達でその処理が厳格に決められています。売却が原則で、手続きも詳細に指示されていますから、現場の財務局が権限を委任されてすべてを処理します。ところが今回の場合、売却でなく貸し付けるというまったく異例の処理をしました。国有地を貸し付けることがまったくないわけではありません。たとえば、市が買うけれども予算を決定するまで、それも単年度で処理できない場合には売却までの間、貸付の形をとるということはあります。市の行政上やむを得ないことですが、その期間は3年以内と決められており、10年間もの貸付という今回のような例はただの一件もありません。

この異例の処理がそもそものまちがいの大もとです。ですから、本来現場で処理できるはずのものができないので、本省に貸付特例の承認を求めるといった手続きをとらざるを得なかったのです。

 

3ショット写真から主客転倒

 

この土地は、(国土交通省)大阪航空局が伊丹空港からの離着陸時の騒音軽減のために買収したもので、関西空港ができたり、航空機の性能がよくなったりして不要地になり、航空局から委託を受けて財務局が売却をすすめるようになったものです。国有地は売却が原則ですが、だれに売ってもいいということでなく、病院や介護施設、保育園など地域のみなさんに役立つような施設に利用しないかということで公示します。大阪音楽大学が申し込まれましたが、前述したように価格が折り合わず断り、そのあとに2013年9月ですが、籠池さんが小学校をつくりたいと申し込んでこられました。

ところが、義務教育の小学校をつくるといわれるのに認可はおりていない、資金のあてもない、先生たちもいない、どう運営するのかのビジョンもない、ないないづくしなんです。記録を見ますと、財務局は何度もそれはどうなっているのか、いついつまでに資金手当ての見通しや学校運営の構想を出してください、と言っている。けれども出てこないわけです。3ヶ月待ち、半年経っても、出てこない。2014年4月15日の森友学園との打ち合わせでは、財務局側から、「4月末までに最終的な資金計画、収支計画、スケジュール資料及びそれらの実現性についての説明資料の提出」を求め、出された資料によっては、「契約相手方の決定に係り重大な判断を行う局面を迎えていると考えております」と伝えています。つまり、ちゃんとした説明がなければもう交渉は打ち切る、そういう局面だとまで言っているわけです。

そこへ4月28日、例の安倍首相の昭恵夫人と籠池夫妻が一緒に写った写真が持ち込まれます。「いい土地ですから前に進めてください」と言われたと籠池さんは熱心に説いたそうです。この日が転機でした。攻守ところを変え、主客が転倒します。ひと月後には、財務局は協力する旨を伝えています。この間に何があったのか、記録は抜け落ちています。6月に入り財務局は、森友学園から国有地取得の陳情を受けていた鴻池祥肇(こうのいけよしただ・故人)参議院議員秘書(当時)に、中間報告を行っていますが、そこでは「貸付」について、本省とも相談した結果、「ご協力する」との結論を伝え感謝されます。秘書からは、「いついつ、だれだれが来た」と、総理夫人の現地訪問を指すような、籠池さんの話しも出てきます。この間に方針がガラッと変わったことは確かです。そこからはもう、いけいけドンドンです。籠池夫妻は、財務局の担当者に「そんな細かいこと言わんでええやないか」とか、しまいには「アホ、ボケ」とぼろくそに言い募っています。

後輩たちに聞くと、「昭恵事案」とか「安倍事案」とこっそり呼んでいたらしいですが、「無理筋の仕事をさせられた」と言っていました。悔しいというか情けないというか、そういう気持ちだったでしょう。しかも、学校建設が始まるとゴミのことが起こり、籠池夫妻はさらに高圧的になっていきます。「いっときも早く手を切りたかった」と私に語ってくれた現役の職員がいましたが、そうであっても厳正にとは思いますけれども、その気持ちも分かります。ともかくもここからさらにややこしい話になっていくわけで、ほんとに残念としかいいようがありません。

ゴミの話をひとこと述べますと、もともとあの土地にゴミのあることは分かっていたことでした。ですから、舗装して駐車場に使うというなら別ですが、掘り返してということになると処理をしなければなりません。通常ですと、近畿財務局が鑑定士か業者に依頼をして撤去費を算出し、その分、価格から差し引いて売値を決めます。ところが今回は、地下3メートルからさらに深いところから出てきたとか何とか言われて、財務局が大阪航空局にゴミの撤去費がどれくらいかと問い合わせています。

航空局にはそのノウハウがないから財務局が委託を受けて売却しているのに、まったく訳のわからないことをやっています。そのアリバイづくりに不動産鑑定士に特に「意見書」出させているわけですから、もう何をか言わんや、です。

それで8億円の値引き、1億3000万円という売却価格が決まっていくわけです。隣の野田公園の10分の1です。国有地の売却は先例評価が重要と前述しましたが、1万円で売ったものを隣には1000円で売ったようなものですから、これでは役所は信用されません。おまけにこれを10年の貸付でやるというのですから、無理筋も無理筋、どこかからの圧力がなければとてもやれる話ではありません。それも、大臣経験者の一人や二人くらいではとてもできないことです。昭恵夫人が名誉校長をつとめ、安倍首相も親近していたからこそ無理が通っていったとみるのが「常識」ではないでしょうか。

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