編集後記(第45号)

新船海三郎

しんふね かいさぶろう | 



▼俳優の大麻所持や少女虐待死の幇助裁判など、このところ裁判官が判決後、被告にかける言葉が話題になっている。「説諭」と言われるが、刑事訴訟規則に、判決の宣告後、裁判長は被告人の将来について適当な訓戒をすることができる、となっていて、刑事事件では珍しくないらしい。知らぬものだから、罪を裁くはずが他人の人生にまで踏み込んでいいのか、それより身内の体たらくを何とかしたらどうだ、と悪たれ口をきいていたが、いやいや、「大崎事件」の最高裁決定はどうだ。地裁、高裁が下した再審開始を一蹴りだ。新たに提出された死因鑑定を「尊重すべき」としながら、鑑定医が自分で解剖したわけではない、などと屁理屈をこね、新鑑定に疑問があるなら、審理をやり直せと差し戻せばいいものを、ポイッとお終いにしてしまった。弁護側の反論や補足立証もシャットアウト。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事事件の原則も投げ捨てた。こんなことがまかり通るなら、もはや再審の扉は明々白々な無罪を証明できないと開かないことになる。5人の判事たちにこそ「説諭」が必要だと思うが、どうも蛙の面に……のようだ。本誌41号でも紹介したが、再審を訴えた原口アヤ子さんはいまや92歳。なお、頑張ろうというのは切なすぎる。

▼米国をまもらない日米安保条約は破棄する、普天間を返すから1兆円よこせ、と米トランプ大統領が言いだした。前者はともかく後者は盗っ人猛々しいにもほどがある暴言。それを承知で、いっさい目を閉じ、口を塞いでこの悪魔のささやきにあえて乗ってみる。普天間がなくなるのだから、辺野古は要らない。カネはF35の購入をやめて捻出する。ついでに高江のヘリパッドも返して貰おう。オスプレイは引き揚げ、本土上空の低空飛行訓練も中止……、ならば日米安保も必要でなくなる――と、そうはいくまいが、安倍政権は打ち消しに必死の体。安保は片務条約じゃないと、日本の米国守護義務を強調し、トランプ発言を逆利用する気配。ホルムズ海峡をどうしてアメリカだけが守らないといけないのかとも言っているから、それでは私どもが、と出ていきそうだ。もう終わらせたいね、こんな卑屈でアメリカしか守らないポチは。沖縄の高校生、与那嶺<RUBY CHAR="海","かい"><RUBY CHAR="椰","や">さん(17)が辺野古の新基地建設問題を米国や世界に発信しようと、「我した島ぬ宝(私たちの島の宝)Our Island's Treasure」と題したドキュメンタリー作品をつくったとFBで回ってきた。ぜひアクセスされたい。

https://vimeo.com/340517922

▼出版社を任されて1年余。「どう、売れてる」とよく聞かれる。分かりそうなものなのにと思いつつ、「あなたは最近、どんな本買った?」と逆に聞く。たいていは、いや最近は図書館で……と、財布の紐は固い。とはいえ、高齢者が図書館で過ごすことに注目する医療関係者もいると聞く。そういうこともあるのか、このところ図書館に関する本が多く出版されている。ニューヨーク図書館の長編映画もあった。いまや、電車内はもちろんレストランも喫茶店も、街角でさえスマホに食い入る人ばかり。即答を求め、刹那に走り、焦り、いらだち、それでいて頭は周りと同調することばかり。ちょっと心を鎮めよう。本でも読んであれこれ考えてみよう。参院選の真っ最中でもあるゾ。      (新船)

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