編集後記

新船海三郎

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▼ランチメニューじゃあるまいに、モリ・カケにつづいてスパ、ときた。スーパーコンピュータのベンチャー企業の社長が助成金詐欺で逮捕された。彼が首相お気に入りの卑劣漢、例の山口某と親密な関係にあることから黒い噂が立っている。この種の助成金は大手企業に回るのが一般的だが、どういうわけかここにも多く回っていた。事情通は不思議がり、「特別なコネ」でもあるのか、と見ていたらしい。R・ベネディクトは西洋の「罪の文化」に対して日本文化を「恥」と特徴づけたが(『菊と刀』)、もともと「罪」の意識の薄いところへ「恥」も失くしてしまったら何が残るのか。忖度におねだり、揉み手に諂い……。「恥を知れ」、といっても分からないか。

▼新幹線のぞみ号の台車亀裂事件。博多を出て小倉で異臭に気づき、岡山から乗った保守要員が停めて点検が必要というものの新大阪では異常なしと引き継ぎ、名古屋まで走った。あと3㌢で断裂。身の毛がよだつ。神戸製鋼のデータ改ざんもおぞましい。軽合金だけでなく鉄粉もというから事態はいよいよ深刻。かなり前からとのこと。大企業でありながら各部門が割拠対立し、品質より儲けを競う商店的経営だったようだ。さらに日産・スバルの自動車業界、三菱マテリアルなどでの無資格者検査、手抜き、データ偽造……いまや日本の製造業全体が問われている。利潤と効率至上の資本の論理が最優先して人間の存在は目に入らぬようだ。まさに倫理崩壊。ヘリの窓枠が校庭に落下して児童がけがをしても、人為ミス、機体の欠陥ではないと飛行再開。同型機は6月に久米島緊急着陸、10月に東村高江で炎上事故。普天間の別型のヘリは3年前、200㌔のミサイル発射装置を落としている。年々増加する落下や墜落事故。人為といいながら何ら防止対策をとらない米軍にここは一番、政府は毅然と飛行停止を求めるべきだろうに、外相は専用機のおねだり……。かつて、「世の中まちごうとる、責任者出てこい!」と舞台から痛憤する漫才師がいたが、今の政府にはそれすらも期待できないか。

▼ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが受賞記念講演で、不確実な未来で私たち(文学)が重要な役割を担うとしたらと提起し、「エリートが優先する世界の文化という心地よい区域を越えて、我々に共通した文学の世界をひろげなければならない」と文学における民主主義の発揚を強調した。本号のインタビューで梅林宏道氏もグローバル化に対抗する科学技術の民主主義を課題にあげている。リニアの談合も、工事は大手ゼネコンにしかできないというエリートたちの傲慢も背景にあろう。提唱される民主主義は、制度としてというよりも人が何をより所として生きていくかの原点と受けとめたい。他者を思い、多様な個性や考え方を、違いをあげて隔てることなく、議論はしつつもお互いを個人として尊重しあう、そのような生き方の根っこ。その民主主義をグローバル資本主義の対極に声高でなくとも確固として置く。これ以上、恥知らず等の闊歩を許さないために。人が粗略に扱われないために。

▼改憲阻止へ正念場の年が明けた。読者諸氏の健康と健闘を祈るや切。いっそうのご鞭撻をお願いする。

(新船)

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