編集後記

新船海三郎

しんふね かいさぶろう | 



▼『新潮45』8月号に、自民党杉田水脈衆院議員がLGBTのために税金を使っていいのか、彼ら彼女らは子供を作らない、「生産性」がない、と寄稿して批判を浴びたのは周知の通り。ところが編集部は、杉田意見はそんなにおかしいかと10月号で杉田擁護の大特集。これには社長も、偏見と認識不足の表現もあると釈明したが、かえって火に油。杉田議員の論考はLGBTを「常識」外、「普通」でない、とまでいっており、根は深い。擁護特集にもLGBTと痴漢を同列視する暴論もあった。性的指向・性自認とも意思の問題でなく、本人にも選択できない、とは自民党でさえ認めている。問題はこれを知ってか知らずか、「多様な考え」「言論の自由」で首相以下自民党幹部が杉田発言を認めていることだろう。新潮はその波に乗ったか。売れれば毒も――なら編集は要らない。某日某書店、面白そうなタイトルに平積みから1冊、手にしたが、出版社を見て戻した。新潮社の新刊は売らないと決めた書店もあるという。同社は限りなく廃刊に近い休刊にしたが、切ってすむ話ではなかろう。

▼それでも、カツカレーは食べたが投票はしなかった議員がいたらしい。自民党総裁選挙をめぐる話である。9月20日、東京都内のホテルで開いた安倍派の出陣式では、国会議員計332人(代理出席含む)にカツカレーを振る舞ったが、直後の国会議員投票で首相が獲得したのは329票。誰だ! となっているらしい。地方議員や農水大臣まで脅して〝絶対1強〟を演出したかったようだが、地方票45%を獲得した石破支持の思わぬ広がりといい、〝蟻の一穴〟はあちらこちらに空いているようだ。総裁選では、メディアはまったく問題にしないが、ネット上では非難囂々の一件がある。立候補者討論会で「読売」の橋本五郎氏が「安倍晋三政権は一貫して拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと言われていた」「現状はどうなっているのか、見通しはあるのか」と質問したときだ。安倍首相は顔色を変え、「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことは、ございません」と。唖然、呆然。「必ず解決する」って言ってたんではないの? 今さらこれはないだろう。プーチンの領土棚上げ発言にも謎の微笑み返し。「北方領土」なんてどうでもいいらしい。要するにこの男、〝やるやる詐欺〟、それも超のつく。そう思わせておいて、改憲へ行くか。悪知恵もここまで来れば過ぎるというもの。

▼東大闘争50年の座談会には、読者諸氏にも言いたいことがあろうと思う。座談会の話題に関係していてもいなくても、諸氏の意見、感想をお待ちする。故加藤周一氏も指摘したように「1968革命」と言われた問題から今日に引き出してくるものは大きく重いものがあろう。50年の歳月はそれに十分ではないだろうか。韓国映画「1987、ある闘いの真実」を見ながら、彼の国が現代の「ろうそく革命」へと引き継いできたものを改めて考えたとき、東大闘争を初めとする当時の大学・学生の闘争を思い起こすことは無駄ではなかろうと思う。京都大学で立て看板が撤去される時代だからこそ、である。私事ながら、東大闘争をたたかった同年の義兄が9月上旬に逝った。座談会企画との何とはない奇縁に、ならば今一度、奮い立てと呼びかけられているような……。       (新船)

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